本領域の内容

本領域では,以下の3つの課題に挑む.

  1. 人=人インタラクションで,人がどのような状況でどのような他者モデルをもち,それによりどのようにインタラクションを行っているのか,またインタラクションの中で他者モデルがどのように学習,変更されるのかを認知科学的に分析する.その際,人=人インタラクションの根幹となっている記号的側面ばかりでなく,非言語的側面にも焦点を当てる.成人間のインタラクションの分析および子供=大人間の(特にロボットとの遊びを介した)インタラクションの分析を行う.
  2. 上記と同様な分析を人と動物のインタラクションでも実施する.例えば,動物が餌(一次報酬系)や人の教示に含まれる韻律特徴(怒った/褒めた声,二次報酬系)からいかにお手などの教示の意味を学習し,さらに獲得された教示(三次報酬系)をも利用していかに人の心的状態を推定するのか,また人が動物の学習状況に応じていかに教示を変化させるのかを中心に分析し,人と動物の他者モデルに基づく適応過程をモデル化する.
  3. 上記の分析に基づき,人の持続的な適応を引き出す人工物のデザイン方法論を確立する.特に,ユーザとの適応的で継続的なインタラクションの観点から全く新しいデザイン基準を提案し,その妥当性を実験的に検証する.さらに,ドライバーの意図を読むカーナビ,ユーザに適応し人馬一体を実現する電動車椅子,オンラインショッピングにおけるコンシェルジュなどの実現を通して,人の適応性を支える環境知能システムを構築する.

3課題間の関係性を図に示す.

他者モデル

 他者モデルとは,インタラクション相手がある状況である情報を得たときに,“こう思考/行動するはずだろう”という,相手の思考や行動を理解・予測するための心的モデルを意味する.

 例えば人同士の会話インタラクションでは,私たちは特に意識しなくても自然に他者モデルに基づいて会話をしている.